今回は、チョコレートづくりの要とも言える、テンパリングについてご紹介します。
テンパリングとは、チョコレートを溶かす際に行う調温のことを指します。
英語のtemper(調節する)という単語から繋がっています。
なぜテンパリングがチョコレートづくりの要と言われるのか、ということについてですが、答えはテンパリングを行うことで「つやがあり」「口どけ滑らかで」「正常に固まる」「ブルーム*が発生しない」いわゆる”おいしい”チョコレートに仕上がるからです。
※「ブルーム」とは、チョコレートの表面にできる、白い結晶のこと。
砂糖が結晶化したもの(シュガーブルーム)と、ココアバターが結晶化したもの(ファットブルーム)の2種類がありますが、テンパリングが不十分であるときに発生するのは、ファットブルームです。食べても人体に悪影響はありません。
チョコレートの中に含まれるココアバターは、冷やし固まる際に様々な形で結晶化します。
そしてテンパリングとは、その結晶を理想の形に整えるための作業です。
ココアバターの結晶が理想の形になると、おいしいチョコレートに仕上がります。
詳しくお話しすると、ココアバターが生成する結晶の形は6種類あり、その中の1種類、Ⅴ型が理想の形とされています。ここで6種類の結晶の特徴についてみてみましょう。
融点 | 結晶の安定性 | |
Ⅰ型 | 約17℃ | 不安定 |
Ⅱ型 | 約22℃ | 不安定 |
Ⅲ型 | 約24℃ | 不安定 |
Ⅳ型 | 約28℃ | 不安定 |
Ⅴ型 | 約32℃ | 安定 |
Ⅵ型 | 約36℃ | 安定 |
Ⅴ型とⅥ型は分子同士の結合が密になり、結晶が安定しています。
結晶が安定していると、チョコレートの表面につやが出て美しく、さらにスナップ性(チョコレートが砕けるときのパキッとした感触のこと)がよくなり、食感も楽しめるチョコレートになります。
また、チョコレートの型からも外れやすくなり、形成においても扱いやすいものとなります。
Ⅴ型とⅥ型に大きな違いはないように思えますが、実はⅥ型には「ファットブルームが発生しやすい」という欠点があります。
チョコレートの表面に白い結晶が出てしまうと、見栄えが悪くなるだけでなく、風味や口当たりが変化してしまうことがあります。したがって、Ⅴ型が一番の理想のかたちとされています。
このⅤ型の結晶を形成するために、テンパリングは非常に重要な手順なのです。