チョコレートの品質管理

チョコレートのおいしさは、保存方法により変化します。そのため、適切な保存方法により品質を保つことが必要です。

チョコレートの保存には、温度と環境が重要です。一般的には、低温でチョコレートを保存すると変性は進行しにくいです。ただし、注意点もあります。開封後のチョコレートを冷蔵庫で保存すると、チョコレートのフレーバーが失われるだけでなく、冷蔵庫内の様々な臭いがチョコレートに吸着してしまうのです。そのため、開封後のチョコレートを冷蔵庫で保存する場合は、完全密封することが必須です。

 チョコレートの変性の中で代表的なものは、表面が白くなる「ブルーム」です。ブルームには、シュガーブルームとファットブルームがあります。チョコレートの表面に水滴が吸着すると、それに中の微細な砂糖粒子が溶解します。その後、水分の蒸発によって再結晶化することで表面が白化するのが、シュガーブルームです。それに対してファットブルームは、ココアバターの結晶が大きな結晶に成長して表面に露出すると、光を散乱して白化する現象のことです。それに伴い内部構造も不均一化し、チョコレートの滑らかさが失われます。

 これらのブルーム現象は、チョコレートが本来混ざり合わない油性の固体粒子と水溶性の固体粒子で構成されており、準安定状態にあることに起因しています。シュガーブルームは、ココアバター(油)と砂糖粒子(水溶性物質)がチョコレートの表面の水分を介して、より安定的な、油と水に分離した状態へと移行しているということです。ファットブルームでは、微細なココアバターの結晶が保存中に大きく成長することで、微細結晶に付随する表面エネルギーの不利を解消しています。

シュガーブルームを引き起こす要因

 ・多湿状態での保存

 ・吸湿性の強い低品位の砂糖などの使用

 ・適切な包装なしでの低温からのチョコレートの移動

 ・高水分を含有したフィリングから放出した水分による結露

フィリング:詰め物

ファットブルームの種類

①チョコレートのタイプ

フィリングなどを含まない製品→ココアバターに含まれる高融点油脂の結晶が微結晶から粗大結晶へ成長することで発生

フィリングを含む製品→フィリングの低融点油脂がチョコレート側に移動し、チョコレート側からはココアバターの油脂が移動することで発生

チョコレート側では、液体の油が入り込むことによって油脂分子の拡散が促進され、ファットブルームが起きやすくなります。

→油脂移行型ファットブルーム

油脂移行を促進する駆動力は、フィリングなどに含まれる液体油の融点とココアバターの融と点の差です。そのため、油脂移行抑制のためには、融点の高い液体油を用いるとよいと言われています。

②保存温度

ファットブルームに最も大きな影響を与えるのは、保存温度です。フィリングを含まない場合は 28 ℃以下、フィリングタイプの場合は 21 ℃以下での保存が、ファットブルーム防止のための目安だと言われています。油脂移行速度が温度に非常に敏感であるため、フィリングタイプの方が低い温度で保存する必要があります。

温度がもたらすファットブルームへの効果

①固体脂含量は 25~28 ℃ 以上で 50 % 以下になるため、この温度で急激に液油濃度が増加し、結晶の粗大化を促進します。

②多形転移とオスワルド熟成という 2 つの結晶粗大化の速さが温度上昇により増加します。

③油脂移行の速度は温度とともに著しく上昇します。

④昇温と冷却を繰り返す温度のゆらぎにより、ファットブルームが促進されます。

温度上昇→多形転移や準安定な多形結晶の融解などが促進

冷却→より安定な多形結晶の成長が促進

一度溶けてしまったチョコレートを再び冷却すると白化しているのは、これが理由だと考えられます。

⑤チョコレートの固化状態

チョコレート中のココアバター結晶の構造の緻密さも関係しています。ココアバター結晶のサイズと配向を揃えて稠密な結晶ネットワークにした場合は、そうでない場合と比較して油脂移行速度が低下してファットブルームの発生が抑制されたという報告もあるそうです。

 ファットブルームの種類はまだあるのですが、皆さんに最も関係が深いものは、保存温度によるものだと思います。正しい保存をして、美味しくチョコレートを食べましょう!

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